召喚文

わがまえに来たりて礼をなすべし。
汝が忠誠を尽くすべき父と(+)子と(+)聖霊(+)の御名において
汝に出現を命ず。遅滞なくわが前に出現せよ。
わが肉体にも魂にも危害を加えることなく、
この円外に現れるべし。
恐怖を与えぬよう、麗しき人間の姿にて現れるべし。

THESIEL, BARACHIEL, BOLCADES
SUSPENSUS VIS AVA ACHARE
PERGALIUM GASPAR,
CONAOOTUM ENIM SLRIBAM TOITEE,

* *よ、われ汝に命ず。
生ける神と(+)、真の神と(+)、聖霊(+)の御業により汝をを召喚す。
御言葉によりて天地万物を創造せし神の御力によりて汝を召喚す。
父と(+)子と(+)聖霊(+)の御名によりて
聖なる三位一体の御力によりて
永遠の純潔なる聖母の御名によりて
真に祝福されたる無原罪懐胎によりて
われ、汝を召喚す。




霊に対する歓迎の言葉

ようこそ高貴なる王よ、諸侯よ、わが要請に応えてこの場に来たりし者たちに神の恩寵あれ。
全能の神、大いなる創造主の名代として汝らに命ず。この場にありて円外にとどまり、見苦しくない姿をよく保つべし。
わが言葉を万軍の主の御言葉と心得るべし。




手続き

召喚の後、霊が出現したならば、奥義書に署名させ、いつでも召集に応じる旨を誓約させる。これを終え、本来の目的を達したならば霊に退去を命ずる。


霊の退去

この場になんの害も及ぼすことなく平穏のうちに退去せよ。
召集されしときは常に出頭する準備をなすべし。



霊に対する強請

われら、神の似姿に造られたるものなれば、神の御力と御意志を具えるものとして、汝に強請する。**よ、全能なる神の御名の御力を認め、速やかに現出せよ。EL ADONAY EL ELOHIM ZABAOTH SADAY AGLA

アダムの神の御名 JAH によりて命ず。速やかに現出せよ。
ヤコブの神の御名 AGLA によりて命ず。速やかに現出せよ。
アロンの神の御名 ANAPHEXETON によりて命ず。速やかに現出せよ。
モーセの神の御名 ZEBAOTH によりて命ず。速やかに現出せよ。
ヨシュアの神の御名 IEHE によりて命ず。速やかに現出せよ。

BALBACHIA PRIMEUMATON AMIORAM

EL ATY TILEP AZI HYN JEN MINOSEL HAU HAU HAU IA IA IA VAU VAU VAU



解説 : 魔物喚起の手続きはどの奥義書でも大同小異であるが、ホノリウス奥義書はそのキリスト教色の濃厚なる点が特徴といえる。とりわけ神名を旧約の登場人物に配属して連呼する点が注目に値するのである。異本によっては、旧約中のさまざまな奇跡を神名に配属する場合もある。すなわち「太陽を中天にとどめしヨシュアの神の御名…」というような表現となる。

 なお、この部分にあっても「見苦しくない人間の姿にて円外に現出せよ」と連呼するのは、やはりその後の魔物出現の伏線といえようか。すなわちこの種の悪魔喚起儀式は往々にして第三者の臨席を伴う。あからさまにいえば、円内には術者だけでなくパトロンの貴族やカモにすべき金持ちも同席しているのである。そういった観客の目の前で豪快な火炎悪竜を呼び出せれば最高だろうが、現実は厳しい。悪魔の扮装をさせたアシスタントをスタンバイさせておいて、頃合を見計らってご登場願うという手口が常套手段であったと思われる。そのためにもまえもって「見苦しくない人間の姿で出現する」と規定しておく必要があるのだろう。

 出現をしぶる霊に対しては執拗な請願、命令、威嚇等が行われるが、こういった行為を exorcism と称する。この単語は通常にあっては「悪魔祓い」と訳されるが、奥義書では場違いな訳語になってしまうため、とりあえず「強請」という表現を採用している。exorcise とはギリシャ語の exorkiz が語源であり、「誓いを立てさせて移動させる」くらいの意味である。ゆえに神の名前を用いて呼び出す場合にも使用可能なのである。



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