THE DIVINE ADVENTURE
IONA : BY SUNDOWN SHORES

STUDIES IN SPIRITUAL HISTORY
BY FIONA MACLEOD
 子供の頃、わたしは近所の塩水湖によく捧げ物を投げ入れていた−−小銭、花、貝殻や獲れたての鱒、一度などは宝物だった火打石製の鏃を捧げたのだ。

ヘブリデス諸島出身の乳母が謎の海神ショウニーのことを語ってくれた。いまでは無駄な崇拝にずいぶんと時間を費やしたものだと思っている。

失望と怒りすら混じった儀式といえた。

一度もショウニーには会えなかった。

びくりとする瞬間はままあったが、突然の鴎の鳴き声も、鰯を追う鱈の群れの水音も、唐突に顔を出す海豹も、どれも見慣れた光景となった。しまいにわたしは恐怖すら望むようになってしまった。

しかし海岸にそれを見出すのは不可能だった。

内陸のほうなら、黄昏刻になれば謎めいた陰影がふんだんにあった。

わたしにも跳梁する風の音が聞こえた。

しかし海岸では真夜中ですらまったく恐怖を覚えなかった。

海とともに海の音を聞いているとあらゆる恐怖が払拭されるのだ。



 面白かったのは、このあいだ小さな女の子が海岸で遊びながら歌っているのを聞いたときだった。晴れてはいるが海は荒れていて、アイオウナの白い砂に砕ける波打ち際を、少女は歌いながら駈けていくのだ。


“シャニー、シャニー、シャニー、
わたしのあしをすくってごらん
それができたら、シャニー、シャニー、シャニー、
おまえとともにどこまでもゆこう”


 この愛らしいシャニーはわたしの旧友ショウニーとまちがいなく同一である。ショウニーは船の竜骨を掴んで水夫を溺死させ、水夫の歯で死の首飾りを作るという恐ろしさだ。ショウニーは邪神だった。かつてかれは湖で泳いでいた娘をつかまえたが、思い通りにならないので娘を岩に縛りつけた。今でも娘の長い茶色の髪が引き潮時に漂うさまが見えるという。地名まで言う必要はないだろう。

解説 : Fiona Macleod, The Divine Adventure (London: Chapman and Hall, 1900) の一節である。ケルトの閨秀フィオナ・マクラウドの正体がウィリアム・シャープであることは周知の事実であるが、マクラウド自身が有するケルティック・ペイガン方向が顕著に表れている個所として訳出してみた。この流れがダイアン・フォーチュンの『海の女司祭』へと引き継がれたのは容易に理解されるであろう。子供の頃に謎の神を秘密崇拝して捧げ物を供えるという行為は現代のペイガン関係者の多数に見られる共通体験でもある。
 冒頭の赤黒文字ロゴとケルト唐草は1900年の初版中扉を再現したものである。



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