霊を召喚する魔法の鐘



稀少なる独逸国古文書より



この鐘はエレクトリクム・マギクムを用いて鋳造し、上図の如く細工すべし。周囲にテトラグラマトン、サダイの文字を浮き彫りにて刻み、また汝の出生宮と支配星の記号を記せ。

 また鐘の内側にエロヒムなる言葉を、鐘舌にはアドナイなる言葉を刻め。この鐘は清浄なる部屋にて保管すべし。汝、天界の御使いあるいは善なる霊の召喚を望むとき、適切な香を焚き、定められたる詠唱を熱心になしたるのち、鐘を三度打ち鳴らすべし。されば霊が直ちに汝の前に出現し、汝の願いをかなえるであろう。このことは極秘にすべし。

ラファエル著『十九世紀の占星術師』(1825)より


解説 : 占星術師ラファエルことロバート・クロス・スミス(1795−1832)が著した『十九世紀の占星術師』にあった記述である。魔法の鐘は意外なほど伝承が少ないため、このサンプルは貴重である。材料とされているエレクトリウム・マギクムは正体不明の金属であり、一説では隕鉄のこととされている。

 ラファエルといえば占星術師のイメージが強いが、その実態は総合オカルティストであり、『メルクリ団』なる組織の一員として活発な執筆活動を行っていた。ロバート・クロス・スミスは1832年に37歳と言う若さで死去してしまうが、ラファエルという名前を用いた天文暦はその後も出版され続け、さらにラファエルの名を冠する占い本の類も多数世に出回っている。そのためロバート・クロス・スミスを初代ラファエル Raphael I と記述することもある。

 ラファエルと『メルクリ団』は英国のポピュラーオカルトを語る際に見逃されがちだが、イブニーザ・シブリー&バーレットの次、ブルワー・リットンの前に配置するとわかりやすい。

 せっかくなのでCGの鐘も作製してみた。上の記述では鐘のサイズが判明しないため、半鐘との想定によるモデリングである。クリックすると別窓にて大画像が開く。




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