タロットに似たもの6 マレの太陽

Celestial Chart part 2 The Sun



天文学や観測機器の発達とともに、天文図譜の惑星描写に変化が生じる。それは当然として、圧倒的光輝をもって観測を拒否する太陽の描写にもそれなりの変化があるから面白い。下にあるマレの太陽図などは科学的観測と中世的約束、さらに独自の空想がミックスした珍品といえるかもしれない。




 太陽の周囲のプロミネンスは観測に基づくものと思われる。マレ図にあっては太陽表面の燃える山や谷、降り注ぐ星に溶岩の川が新機軸である。太陽内にて火炎が雲となり、火の雨となり、火の川となって火の海に注ぎ込み云々というエネルギー循環を描いているのであろうが、その描写はあたかも黙示録の一場面を思わせる。




 画面下の風景は特定が難しい牧歌的情景であり、よくよく考えれば科学的図版には不要である。このあたり、1686年という作製年代の影響であり、天体のみを描いたのでは画家も観客も落ち着かないのである。

 作者のアラン・マヌソン・マレ Alain Manesson Mallet (1630-1706) はルイ十四世の宮廷に出仕したエンジニアであり、数学と幾何学、築城術、地図作製を得意としていた。上の図版は1686年に発表された Description de l'Universe 収録の手彩色銅板画の一葉 (158*110mm) である。この太陽図はマレの天体図のなかでも出来がよい。色塗りも丁寧である。





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