O∴H∴名言集のなかに「呪うより殴るほうが早い」というのがあります。これが結論なのです。
われわれの研究結果からいうと、弱者が報復手段として呪術に訴えても無意味です。せいぜいカタルシス程度にしかならず、それならいっそ『仕掛け人梅安』でも読んで溜飲を下げるほうがましでしょう。
あるいは神様に報復を依頼するパターン。自分はとてもかなわないから、神様に天罰をくだしてもらうというわけで、喧嘩に負けた子供が「くそー! お兄ちゃんにいいつけてやる。お兄ちゃんは強いんだぞー!」と泣きながら走っていくのと一緒です。この状況下で「よし、かたきをとってやる」と出陣してくるのであれば、お兄ちゃんにせよ神様にせよ、たいした代物ではない。
問題は、強者が弱者に対する恫喝として呪術を用いる場合です。これは効きます。師匠が弟子に対して呪いを発すると、実に効果があがったりします。
有名なところでは、ダイアン・フォーチュンが魔術キャリアに乗り出す以前に遭遇した女校長という事例があります。立場上フォーチュンよりも上にあるこの女上司は、部下に対して強烈な支配力を有しており、逆らったフォーチュンに心霊攻撃を仕掛けたそうです。
結果としてフォーチュンは以後数年間におよぶ神経疲労をわずらったそうで。
いわゆる魔術結社同士の魔術戦などは、話としては伝わっていても、実態は散文的なものです。怪文書の配布、訴訟合戦、いやはや情けないかぎり。
ド・ガイタ一党VSブーラン一味とか、ジェラルド・ガードナーVSケネス・グラントなど、そこそこ派手な戦いもありましたけどね。