世間一般、ほとんど理解していないことですが、悪霊と悪魔はちがうのです。
悪霊とは最下位の天使でありまして、神の命令で人間をいじめるとされておるのです。うそだとお思いの方は旧約のヨブ記を参照のこと。
イエズス会が行ういわゆるエクソシズムは、正確には悪霊祓いなのであります。悪霊として活動する最下位天使に任務解除を通告するわけですから、「神の御名において命ずる」という台詞も意味を持つ。下っ端に上の命令を伝えるという構造なのですわ。
も少しわかりやすくいえば、平社員を転勤させるというか辞令を渡すというか、人事異動なのですな。
「汝ら悪霊よ、主の御名において命ずる。すみやかにこの者の体を去れ。イタ、ミサ、エスト、ホック・エスト・エニム・コルプス・メウム!」
これで出ていってくれれば一件落着。
出ていかないとなれば、あとは実力行使あるのみ。殴る蹴るの大騒ぎとなってしまう。
ちなみに日本国ではこのあたりのメカニズムが徹底周知されており、狐憑きの対処法などは恐ろしいほどにビジネスライクですわい。ようするに取りついた狐の格を調べて、そいつよりも位が上の狐にとりなしてもらうというのが定番。油揚げ100枚持ってって話をつけてもらうのです。ただ、ここでむつかしいのは余りに位が上の狐に頼んでも意味がないということ。直属の上司が最適なのであって、そのためにも日頃から狐の人事異動に注意を払う必要があるのだそうです(うちの近所のお稲荷さんの宮司さんのお話)。
最終的には、何事も日頃の挨拶と人間関係がものをいうという、まあ常識的な話になってしまいます。