剣の9

悲嘆のうちに寝椅子に座す女性。頭上に剣が並んでいる。これほどの悲しみは知らないという風情。完全に見捨てられる様子を描いたカード。

カードの意味: 死、失敗、流産、遅滞、欺瞞、失望、絶望。
逆位置: 幽閉、疑惑、疑念、根拠のある恐怖、恥辱。

-- A.E.Waite The Pictorial Key to the Tarot (Rider, London: 1910), p.236.

このカードが描いている光景は単なる悲嘆の図ではない。それは達人として再生する際に経験しなければならない魂の暗い夜」Dark Night of the Soul である。人の身であるがゆえに心中にうずまく醜い嫉妬や憎悪を直視してしまい、悲嘆にくれている女性がいるが、その冷えた心を温める毛布の柄は薔薇と十二宮のパッチワークである。黄金の夜明け団の内陣「ルビーの薔薇と金の十字架」団への参入儀式に用いられる「地下納骨所」の壁面をあらわしている。

毛布拡大図 地下納骨所内部

寝椅子のパネルに描かれているのは創世記の「カインとアベル」のエピソードすなわち嫉妬ゆえに弟を殺害するという原罪の光景である。参考としてオトリーの図版集にある殺害図を出しておく。

寝椅子パネル拡大図 アベルを殺すカインの図

 そして頭上にある九口の剣は、新たに生まれ変わるために必要とされる9ヶ月間を表している。

 



BACK