タロット聖人伝

 聖アンナ

 マリアの母にしてイエスの祖母。正典には登場せず、外典ヤコブ原福音書に若干の記述が見られる。中世、聖母信仰の隆盛とともに注目を集めるようになる。

 アンナは老齢になってからマリアを身ごもっており、その妊娠自体が無原罪懐胎とされている。

 作画上のアンナは通常、尼僧姿の老女として描かれる。書物を開いて幼いマリアに読み書きを教える場面も多い。

 左はマゾリーノとマザッチョの合作による「聖母子と聖アンナ」(1425頃)。聖母子の背後から庇護する形をとることが多く、老婦人の理想像という側面も持つ。
 



 1500年頃に作られた家庭用祭壇の木彫衝立に見る聖母子と聖アンナ。

 聖アンナは尼僧姿であり、マリアは戴冠した姿で描かれている。おそらく両者とも尼僧姿にすると識別が困難になるからであろう。

 尼僧姿の聖アンナと戴冠したマリアという組み合わせは女教皇と女帝を想起させるものである。

 女教皇を「受胎告知のマリア」と見る説が有力であるが、聖アンナを描いたとする見方も捨てがたい。



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