The Chariot 戦車

Veiled from Men's eyes th'Unknown doth move
Silent, Omnipotent:
And only those who dwell in Love
Fear not It's fixed intent.

人の目より隠され不可知なるものは動く
音もなく、あまねく。
されば愛のなかに住まう者たちのみが
不可知なるものの確固たる意図を畏れることなし。


 ホートン・タロットに説得力を持たせる一枚として、この絵はもってこいの存在である。ヴェイルにて顔を隠す「不可知なる者」が雲に乗り、世界を疾駆する図である。しかもかれの意図には懲罰が含まれている。すなわち黄金の夜明け団で言えば
 「かれら、風の乗る如く旅し ―
  人の打てざるところにて打ち ―
  人の殺さぬところにて殺す ―」
にあたるといえるであろうか。右手に持つ杖の先端には小さな球、さらに球に十字がとりつけてある。懲罰の杖と見なしてよい。

 このヴェイルをかぶった「不可知なる者」はホートンの『魂の道』に何度も登場しているが、小生が興味深く思うのはRWSタロット、杯の7との共通点である。

 結論を先にいうと、RWSの杯7はホートンと関係があるのではないか。ウェイトがタロット製作にあたって「この方面に大変造詣が深い人物の助力を得た」(オカルト・レヴュー1909年12月号)という謎の人物、これはW・B・イエイツであるとされてきたが、ホートンの可能性もあるのでは、と思うのである。

 パメラ・コールマン・スミスとホートンが十二分に面識があることは『グリーン・シーフ』誌を見れば一目瞭然だが、はたしてホートンとウェイトの間にも交流があったことが確認されている。R.A.ギルバートによれば、ホートンは何度もウェイトに手紙を出し、魔術結社関連の質問をしているとのこと。また『オカルト・レヴュー』誌編集長ラルフ・シャーレイはホートンがよく編集部に遊びにきていた旨を1919年のホートン追悼文にてふれている。詳しいことはライダー・ウェイトスミスタロット関連の拙論を参照していただくとして、ようするにRWSタロットは製作段階において原画上でかなりの修正を施されており、その際に実際にペンを握ったのがホートンではなかったか、と小生は考えているのである。

 RWSと『魂の道』はある種のジョイント企画ではなかったのか。さらに考察を進めたく思う。

 



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