正義 Justice

In hidden wisdom Fate doth part
The ways of those who long have groaned
'Neath custom, while each seeking heart
For its own mate hath hopeless moaned.
Beyond all time, within the Light,
All the ways do meet that lead aright.

運命は秘められた叡智のもとに
長きにわたり慣習に苦しめられたる者たちの、
自身の真の伴侶を求めて嘆きたる心たちの
道を分かつ。
時を超えるところ、光のなかに
すべての正しき道が合流す。


社会的因習の下に夫婦となった男女が、束縛を断ち切ってそれぞれの道を歩む図、である。1910年当時、別居中の妻子を持つホートンの心情を端的に表しているといえようか。

 どうもヴィクトリア朝の男女のなかには、これといった恋愛もないまま幼馴染と結婚し、しかるのちに恋に目覚めて悲喜劇を味わうというパターンが存在したようである。イエイツもぼやぼやしているとキャサリン・タイナンを押し付けられそうになったので早々にロンドンに逃亡、その後は女優や人妻といろいろあったのであり、それを霊的観点からいかがなものかと批判するホートンがいるという、一種コミカルな風景が展開されていた。

 タロット図像的にいえば、剣を持ち顔を覆う神的存在、ならびに鎖から解き放たれる男女という組み合わせは、きわめてタロット的といってよい。難点は天秤がないことだが、それを補ってあまりある構図である。センターに直立する覆面は例によって「不可知者 the Unknown であるが、かれが手にしている剣に特徴がある。左の鍔先に上向き三角模様、右が下向き三角であり、柄先には両者を組み合わせた六芒星がある。これは典型的な魔術剣の仕様であるから、この絵が収録されている『魂の道』そのものの性格を反映していると見てよい。





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