The Hermit 隠者

In the blackness of the night
The Spirit opens wide a door
And, in wonderous, golden light,
Reveals the hoped-for, distant shore.

夜の漆黒のなかにあって
霊は扉を開け放つ。
されば驚異の黄金の光が
待望の遠き岸辺を明らかにする。


 「ホートンはつねにどことなく孤独だった…より素晴らしい別世界からこの世に流されてきた人間のようだった。完璧が存在しない世界で完璧を求める理想主義者といおうか。自分自身の世界に棲んでいる人間といおうか」 (イングペン、『ホートン』、17頁)

 「カートライト・ガーデンズの自室で孤独な禁欲主義者の生活を送ってはいたが、ホートンはまったくの孤独というわけではなかった。ライダー・ハガード、レディー・グレゴリー、イエイツといった少数の友人に会いに行くこともあったし、生涯の趣味というべき劇場通いも続けていた。しかしブルームズベリーにおけるかれの晩年の孤独ぶりを示すエピソードを紹介しよう。かれの部屋は大きな建物の最上階にあり、大きな螺旋階段を上っていかなければならない。ある土曜日、夜遅く帰宅すると、建物のなかにはだれもおらず、真っ暗な階段をあがっていくことになった。大きな鞄を持っていたため、いつものように階段の手すりを伝うことができなかった。最上階について電気を点けてみると、手すりも柵も見えなかった。かれが知らないうちに、取り払われていたのだ。そのことをかれに教えてくれる人もいなかった。階段を上る際、右側によろけていたら、そのまま転落するしかなっただろう」(イングペン、19頁)

 かくの如く隠者、世捨て人的資質に恵まれたホートンである。ゆえにアルカヌム九番に相当するイラストには事欠かないのだが、ここは「夜」、「光」、「沈黙」というエレメントを重視してこの絵をセレクトしてみた。フード姿の老人の、その内面を描いた一枚、というコンセプトである。

 



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