アルカナVIII

文字 Heletha (H) -- 数字 8

テミス : 均衡


 H−8は神界にあっては絶対の正義をあらわす。知識界にあっては牽引と反発をあらわす。物理界にあっては相対的かつ誤謬ある狭い正義すなわち人間の正義をあらわす。

 アルカナVIIIは槍の穂先をつけた冠をかぶって座す女性の姿であらわされる。右手に切っ先を天に向けた剣を持ち、左手には天秤を持つ。因果の天秤と応報の剣という古代からの正義の象徴である。正義は神より発するものであり、権利と義務のあいだの秩序と均衡を回復する安定作用である。この場の剣は義人に対する保護の象徴であり、罪人に対する警告である。《正義》の両眼は布帯によって隠されている。人の世の因習など勘定に入れずに計量し、断罪することを示している。

 大地の息子よ、心に刻むがよい。勝利をおさめ、障害を克服することは人間の責務の一部でしかない。そなたが責務の完遂を望むのであれば、そなたが発動させた諸力のあいだに完全なる均衡を確立せねばならぬ。すべての活動は反作用を生むのであり、《意志》はまえもって反作用の猛攻を予想する必要がある。未来はすべて善と悪の均衡にかかっている。均衡を見出せぬ《精神》は蝕の時の太陽に似たり。

‐‐ ポール・クリスチャン 『魔術の歴史と実践』(1871)


参考


エリファス・レヴィ 「剣と天秤を持つ正義」-- 『高等魔術の教理と儀式』 (1855)


パピュス 「真正面を向く女性が鉄のコロネットをかぶって玉座に座す。神殿の二柱のあいだに位置する。胸元に太陽十字。右手に切っ先を天に向けた剣、左手に天秤を持つ。」 -- 『ボヘミアンのタロット』 (1889)


ウェストコット 「第八のタロット・トランプは正義と名付けられており、長衣姿で戴冠した女性が剣と天秤を手に座す姿であらわされる」 -- 『サンクタム・レグナム』 (1896)


ウェイト 「このカードは伝統的シンボリズムにそっており、見たままの意味を有しているため、附言することはなにもない。」 -- 『タロット図解』 (1911)


解説 : 正義の札は伝統的テミス像そのままのため、これといったヴァリエーションは見られない。目立った差異としては、目隠しの有無くらいであろう。そもそもタロットの正義はヴィスコンティ・スフォルザ版あたりから目隠しがなく、ゆえに原型はテミスではなく大天使ミカエルであるという説も根強い。



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