ポール・クリスチャンのタロット

前説

 以下に紹介するものはポール・クリスチャン著『魔術の歴史と実践』(1871)に記された独自のタロット解釈である。クリスチャンの来歴に関しては魔術人名録のクリスチャンの項を当たられたし。

 クリスチャンのタロット観はド・ジェブランのエジプト起源説とレヴィのカバラ関連説を折衷したものといえる。古代エジプトにおいてはピラミッドにて秘儀参入儀式が執行されていたとの設定で、スフィンクスの前足に仕掛けられた隠しスイッチを押すと、青銅の隠し扉が開き、地下へ通ずる階段が現れるといったファンタジーが語られる。その後、クリスチャンはまるで見てきたかのように儀式の模様を語り続け、志願者がさまざまな試練にさらされる様子、パストフォーレと呼ばれる司官が明かす密儀が紹介される。


 気を落ち着かせること数分、志願者は立ち上がり、壁の亀裂のなかへ入っていった。螺旋状の階段があった。二十二段目に青銅製の格子があった。その向こうに長い回廊が見えた。スフィンクスの彫像が肋骨状に並んでいた。全部で二十四体あった。各スフィンクスの間の壁面は、不思議な人物や象徴を描いたフレスコ画で覆われていた。22対の絵画が互いに向かい合い、中央には十一基の青銅製の鼎が並べられていた。鼎には水晶製のスフィンクスが載っており、そのなかでは香を混ぜた油に浸した灯芯が燃えていた。
 いまやパストフォーレの名を持つ術士が進み出て、格子を開いた。「大地の息子よ」と術士は微笑みながら語る。「歓迎しよう。そなたは叡智の小径を発見することで陥穽を逃れてきた。密儀志願者といえどもこの試練に打ち勝ったものは数少ない。他の者はみな滅びた。大いなるイシスがそなたの保護者なれば、女神こそがそなたを導くであろう。そなたがつつがなく聖域に達し、美徳の報酬を得んことを願おう。わたしとしては、このさきもそなたにとって危難の連続であることを隠そうとは思わぬ。されどこれらの象徴を解説することでそなたを激励することは許されておる。これらの象徴を理解すれば人の心に堅忍不抜の鎧が生まれるのだ。わたしとともに来たれ、そして聖なる象徴を観照せよ。わが言葉に耳を澄ませ、心に刻むことができたなら、地の表に戻りしとき、そなたは世界の王侯よりも大いなる力を得ているであろう」
 ゆえに22枚の絵画の前を通過するとき、志願者はパストフォーレから以下の情報を得るのであった。


Paul Christian, The History and Practice of Magic (London: Eng.tr. Ross Nicoles, 1952),p. 94.


Arcanum I : Arcanum XII :
Arcanum II : Arcanum XIII :
Arcanum III : Arcanum XIV :
Arcanum IV : Arcanum XV :
Arcanum V : Arcanum XVI :
Arcanum VI : Arcanum XVII :
Arcanum VII : Arcanum XVIII :
Arcanum VIII : Arcanum XIX :
Arcanum IX : Arcanum XX :
Arcanum X : Arcanum 0 :
Arcanum XI : Arcanum XXI :


ポール・クリスチャンのピラミッド儀式 式次第解説イラスト付



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